はたけの本棚

百田尚樹の『カエルの楽園』

百田尚樹の『カエルの楽園』

『カエルの楽園』百田尚樹著

百田さんの作品にハマったきっかけは『風の中のマリア』。オオスズメバチを擬人化し、働き蜂の生涯を描いたファンタジーな物語。これがあまりに面白く、昆虫嫌いなわたしの検索履歴が、しばらくのあいだ蜂に占領された。

わたしは何かと影響されやすいのだが、百田さんは無関心から関心にベクトルを向ける天才だと思う。『カエルの楽園』も、これまで知らなかったカエルの生態と生き様を魅せてくれるんだと期待して読み始めた。

辛辣なディスりの寓話だった

ウラスジ

国を追われた二匹のアマガエルは、辛い放浪の末に夢の楽園にたどり着く。その国は「三戒」と呼ばれる戒律と、「謝りソング」という奇妙な歌によって守られていた。だが、南の沼に住む凶暴なウシガエルの魔の手が迫り、楽園の本当の姿が明らかになる・・・・・・。単行本刊行後、物語の内容を思わせる出来事が現実に起こり、一部では「予言書」とも言われた現代の寓話にして、国家の意味を問う警世の書。

主人公は身体の小さなアマガエルで、彼の名前はソクラテス。生まれ育った国を凶悪なダルマガエルに襲われ、安全で住みやすい楽園を求めて仲間と旅に出る。

おとぎ話のようなストーリーはスイスイと読みやすく、田舎育ちのわたしには想像しやすいカエル目線。弱肉強食の自然界で、ソクラテスのどんな冒険譚が始まるのかなとワクワクしながら読んでいた。

・・・

途中までファンタジーだと信じて疑わなかったわたしは、本当に純粋である。この物語はカエルの冒険譚などではなく、日本の現実を風刺した寓話であった。

登場人(蛙)物の謎解き

この物語の登場人物は、ユーモアも皮肉もたっぷりと込められて風刺されている。

声高に論じられる聞き苦しい思想や、自分の信じる正義以外は悪だとする危なげな価値観が、カエルの世界でも現実と同じ不気味さを持って表現されている。

物語のあちこちに比喩が潜んでいて、何を指しているのか考える謎解きも楽しい。

日本人よ、目を覚ませ!

分かりやすすぎる展開だとか、著書の思想が反映され過ぎているとか、アンチな意見もあったけれど、そうゆう意見の人は頭が良くて日本の情勢にも詳しいのだろう。

何が正しいのか、誰を支持するのか、それはおおいに議論すれば良いと思う。

わたしはそもそも日本の歴史、政治、憲法、国際関係への理解が乏しい。興味がないというより、正しく理解するには難しすぎるのだ。

だからこの本のすごいところは、これまで"軽視"していた無関心なことを、関心事として"重視"できるきっかけを与えてくれたことだろう。思惑通り、日本人のわたしは目覚めさせられたのだ。

さいごに

一冊の本が与えてくれる影響は底知れない。読了後に考察やレビューを読み漁りたくなるのは、面白い本だけが為せる所業だろう。

本当に面白い、日本人におすすめの本。